非常階段に走る

『マジかよ、こんな時に開かないなんて』
さっと周りを見回す、追いつかれていない事を確認すると。
『そういえば、裏手に扉と非常階段があったな』
ふと思い出した。
このビルは建物の横ではなく裏手に非常階段がある。
『よし!裏まで行くか!!』
僕は疲れた体に鞭打ちながら裏手に走る。

『はぁ、はぁ、はぁ・・・』
少し呼吸を整えて、裏口の扉を開けてみるが開かない・・・
『まずいな、完全に入れなくされてるのかな?』
恨めしそうに非常階段を見上げる。
『頼むからどの階でも良い、開いてくれよ』
扉が開かなかった事もあり、不安を抱えながら階段を駆け上がる。

『何なんだよ・・・
何で追いかけられてるのかさっぱり分からない』
非常階段を駆け上がりながら考えてみる。
だけど理由が分からない。
そうこうしていると2階の扉が見えてきた。

『開くかな?』
ドアノブを回してみる。

ガチャ、ガチャ

『ちっ!』
ここも鍵がかかってるようだ。
その時下の方で音が・・・

コツン、コツン、コツン、コツン・・・

見つけたと言いたげな足音がゆっくりと階段を上ってくる。
破裂しそうな心臓を落ち着かせながら階段を見上げ。
『頼むから開いてくれよ』
そう信じるしかなかった。
深呼吸して一気に3階の非常口の扉まで駆け上がる。

『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ』
走り疲れて足がガクガクなり始めてる。
ドアノブに手をかけ、祈りながら回す。
『頼む、開いてくれ!』

カチャ

扉の隙間から埃っぽい臭いが流れ出してくる。
『やった!』
扉を開いて中に走り込む。

かつては賑わっていたビル内、だけど今は辛気くさいどんよりとした空気が漂っている。
かすかに窓から入り込む光に照らされる内部は、今にも別のモノが出てきそうな雰囲気だ。

『さて、逃げるにはどうしよう?』
周りを見渡すと、この3階は隠れられそうな場所は無い。
かつての備品は撤収され、中央は吹き抜け、下に降りる今は動かないエスカレーターがある。
奥の方には階段があり、屋上に上がる階段と下に降りる階段がある。

エスカレーターの付近まで移動して、下の様子を。
『確か2階も何も無かったはず、下に降りるなら1階まで行くしかないな
1階に降りて入り口から逃げるか?
それとも1階の備品が集められてるあたりに隠れるか?』

ふと、奥にある階段に目をやる。

『エスカレーターだと丸見えだよな・・・
奥の階段からが良いかも?』
▶エスカレーターから1階まで駆け下りる    ▶階段まで移動する