出入り口まで走る

追っ手に気をつけながら小走りで出入り口を目指す。
すぐそこに見えてる出入り口、近いはずなのに物凄く遠く感じる。

息を殺しながら一歩また一歩と出入り口を目指す。
足音はまだ聞こえない。
2階を追っ手は探しているのだろうか?

出入り口まで後数メートル、背後を確認して一気に駆け出そうかとしたその時!

グルルルル

どこからか唸り声が聞こえてきた。
まるで地の底から這い出してきた獣の様な気味の悪い唸り声。
背筋に嫌な汗が流れる。
『どこから?』
心臓が張り裂けそうだ。
周りを見回す、だけどどこに居るのか分からない。
1階はまだ備品も少し残っている、あらかたの備品は隅に集められているけど隠れようと思えば隠れられる程度には残ってる。

出入り口に視線をやる。
『走りきれるかな?』
たぶん追っ手も僕が出入り口を目指しているのは予想してるはず。

グルルルル

またどこからか唸り声が聞こえてくる。
意を決し走り出した。
出入り口はすぐそこに!

グガァァ!!

取っ手に手を伸ばした、だけどその手は空を切り僕は激しく突き飛ばされる。
起き上がろうとしたが体に激しい痛みが走る。

うっ・・・

声にならない声が漏れる。
僕は必死で体を丸めまるで亀の様に防御に入る。
低い唸り声が耳元近くでする。
(やばい、このままじゃ殺される)
全身が危険を知らせる。
小刻みに体が震え、血の気が引いていくのが分かる。

追っ手は突き飛ばされた時に落としてしまった、カメラバッグをあさっている様だ。

ガサガサ、ガシャン

荷物をばらまいているのか?
事が終わるのをじっと待つ、下手に動いて殺されたら・・・

どれだけ時間が経っただろう?
音は止み、誰も居なくなった様に思う。

僕はそっと顔を背後にやる。
そこには散乱している荷物が見えるだけで人の気配はない。
体を起こし荷物の所へ注意しながら近寄る。
そこには壊されたカメラと引きちぎられたノートなどが広がっていた。

『助かった?』
どうやら自分以外ここには居ないらしい。
安心したとたん腰が抜けた様に座り込む。
『はは・・・
生きてる、助かったんだ』
▶終わり