終章

刑事さんが尋ねてきた時に少しだけ教えてくれた事。
今回の事件は今から15年前まで遡る。
当時自分はまだ小さかった為記憶には殆ど無いが、同じ様に不当放棄された箱状のものに閉じ込められた事件が2件あった。
どちらも閉じ込められた人は助からなかったが、2件目だと思われる事件で目撃情報があり犯人は無事に逮捕された。
動機についても未だ不明だという、一説では犯人の家族が事故で亡くなり当時生き残った犯人が『神の啓示を受けたものを探す』使者になったと思い込んでの犯行かと思われているが犯行の動機は今でも分かっていないという。
犯人が逮捕されたのは今から12年前、犯行が始まってから3年が過ぎている。
その3年間で何人事件に巻き込まれたのかも犯人は答えない、答えない理由も『本当に神が居るなら助かるはず』としている。
犯行手口は同じで、無作為に選ばれた人が今回の様に冷蔵庫などに閉じ込められて放棄される、その時手荷物などは奪わずに一緒に中に入っていたらしい。
今回の事件でも同じく女性の荷物は冷蔵庫の中に入っていたそうで、彼女の手には携帯電話が握りしめられていたという。

では、何故他にも同じ目にあった人が居たとして携帯電話で助けを呼ばなかったのか?
それは呼べなかったから。
携帯電話があるのに何故呼べなかったのか?
犯人は閉じ込めた人に絶望を与えたかったかどうかは分からないが、当時携帯電話の電波が圏外の場所をあえて選んでいる。
その為携帯電話があっても”助けを呼ぶ事ができなかった”のである。

今回の事件の被害者の女性も何度も何度も連絡しようとした様で、携帯電話の発信履歴に家族や友達の名前が表示されたと刑事さんは言う。
当時この女性の家族から突然の失踪で捜索願が出されていたが、家族や友達が彼女に連絡を入れても、圏外に居た訳だから当然電話はかからない。
こうしたすれ違いの中、家族は失踪から2年後に女性が使用していた携帯電話を解約している。
女性が失踪したとされる時期は今から15年前の事、もしかすると一番最初の被害者かもしれない?

警察署を出た時、何故自分に電話がかかってきたのか分かった理由について。
これは刑事さんからの話で自分の考えていた事が間違いじゃなかった事が分かった。
自分が今使用している携帯電話の番号、これは以前この女性が使用していた番号だ。
あの時表示された番号、それは他でもなく自分が契約した番号だと気づいたから。
電話を受けた時犯人がまるで自分が聞いてるかの様に聞こえたのは当時の会話を女性が伝えたかったのではないだろうか?
私はここに居るんだと。
亡くなった今でもずっと電話が繋がる事を待っていたのではないだろうか?
家族の元に帰れる日がきっといつか来ると信じて。
これが今回の事件について、分かってる範囲の中から刑事さんが教えられる中から説明してくれた事である。

▶終わり