(5)2010年12月1日
あれから仕事で忙しく写真を撮る事ができていなかった。
久しぶりにカメラを片手に滝に出かけていた。
この時期になると滝が凍りついて何とも言えない神秘的になる。
それを撮りにきていた。
『寒!』
まだ日の出前に滝に辿り着く、凍った滝に朝日が差し込む瞬間を撮りたかったから暗いうちから待機していた。
『もう少しだな、日の出の予定時刻は』
三脚にカメラをセットし、ベストポジションを探す。
普段ならデジ一を持ってくるのだけれど、2013年の相手にも見せたかったのでミラーレスを持ってきていた。
他のカメラだと相手に届かないんじゃないかと思ったからだった。
時間になると朝日が凍り付いた滝を照らし出す。
何とも言えない光景に一瞬我を忘れて魅入ってしまう。
『あ、やば。写真撮らないと』
急いでシャッターを切る、途中で三脚からカメラを外し手持ちで撮影する。
寒いなんて事は忘れていた。
無心でシャッターを切る。
ズームレンズを普段から使わない事もあり、自分で動くしかない。
日の出の時間はアッという間に終わりを迎える。
『やっぱり短いな』
暫く滝を眺めながら日頃のストレスを発散させていた。
その後帰り道でも何枚か撮りながら、家に帰り着いたのは夕方になっていた。
今日の写真を整理しながら探していくと、2013年11月28日の写真を見つける。
『あの日のメッセージは届いたんだろうか?』
深呼吸をしてその写真を開く。
2010年のあなたへ
こちらは今2013年です
不思議ですね、過去から写真が届くって
メッセージまでついてるなんて
この為にプリンターを買ったんですよ^▽^
たぶん2013年に初めて行った僕の写真なんだろう、街の写真にメッセージが書かれていた。
『届いてたんだ。はは、凄いな』
僕の写真が未来へと旅をしている、そんな不思議な事が今自分に起こっている。
あり得ない現実に戸惑いもあるけど、同時に興奮していた。
さっそく今日撮った写真の中からお気に入りを現像する。
現像しながらふと思った事があった。
『これって、どの写真が向こうに行くか決められるのかな?』
今までは気にもしていなかった事だけど、どの写真が相手に届いているのか分からなかった。
自分の気に入った写真が届いていれば良いのだけれど・・・
どうすれば自分が一番だと思える写真を届ける事ができるか考えた結果。
『そうか、データは全部パソコンに移すから気に入った写真だけをメディアに残しておけば良いじゃないか?』
試しに見せたい写真以外を削除して、2013年から届いた写真にメッセージを書き込む。
2013年のあなたへ
こちらの写真届いていたんですね
どの写真が届いているのか分からなかったので
試しに見せたい写真だけをカメラに残してみました
見せたい写真だけ届くのだろうか?