とあるクリスマス・イブのお話

皆さんはこんなお話をご存じでしょうか?
その日は今年で一番寒い日だった、クリスマス・イヴだと言うのに街行く人は家路を急いでいました。
その男も仕事が終わり家路を急ぐ一人でした、急ぐと言ってもその日は何の予定も無く家に帰ってもただ一人でテレビを見ながら過ごすだけ。
恋人と過ごす予定などありはしませんでした。

男が信号待ちをしていると、反対側に女性が同じく信号待ちをしていた。
その女性を見た時、男は一目惚れをしてしまいました。
男も自分がまさか一目惚れをするなど思ってもいませんでしたが、その女性に目を奪われてしまったのです。

信号が青になり男は歩き出し、反対側から女性も歩き出しました。
男はその時声をかけるべきか悩みながら、結局何もできずに渡りきり振り返って女性の後ろ姿を目で追うだけしかできませんでした。

それから数日男は毎日同じ時間帯にその場所に通ったのですが、残念ながらその女性に会う事はそれ以降ありませんでした。

1年後のクリスマス・イヴの夜。
その日も凄く寒い夜で男は何気にあの女性と出会った場所へと向かっていました。
もしかしたら?そんな事あるはずも無いのに男は少し期待をしながらあの場所にたどり着くと、あの日と同じ様に信号待ちをしていました。
すると、反対側に女性が信号待ちしている事に気がついたのです。
男はその女性を見て、あの時の女性だと気づきました。
これこそ運命の出会いなんだと男は思ったのです。
男が女性を見ていると、女性も男に気づいた様で目が合った時にニコッと男に微笑んだのです。
もしかしてあの女性も自分を捜していたのだろうか?
そんな事を考えていると、女性が男に向かって歩き出しながら手招きをしていました。

男はその手招きに応える様に女性に向かって歩き出しました。

『クリスマス・イヴだと言うのに』
一人の男が呟きました。
『そうだな、仕事してるってのも寂しいもんだよな。まぁ仕事が無くてもスケジュールは空いてるけどな』
もう1人の男が言いました。
『だけど不思議だよな、こんな事があるなんて』
男は足下を見ながら。
『まるで流れ出た血が人の形をして、抱き合ってる様に見える』
男の足下には仕事帰りであろう男性が倒れていました、その男性から流れ出た血が女性の様に見えていたのでした。
『早く事故処理をして署に戻ろう、こう寒いとたまらん』
もう1人の男が足下を見ている男に言いました。
『すまん、ちょっと見惚れてしまった』
男達はやるべき事に戻って行きました。

それから毎年この横断歩道には年に一度だけクリスマス・イヴの夜に現れる男女の幽霊がいると噂される様になりました。
二人は片時も離れたくないという感じに抱き合っていると。
そしてその二人の幽霊を見た恋人達は末永く続くと言われています。