沙織の家に辿り着いたのは、授業で言えば4時限目が始まる頃だろうか。
何となく家がどんよりしてる気がするのは莉杞の不安のせいなのかも知れない。
一つ大きく深呼吸をしてインターホンを押した。

ピンポーン♪

反応が無い。
『おかしいな、この時間ならおばちゃんが居るはずなのに？』
もう一度インターホンを押してみる。

ピンポーン♪

やっぱり反応が無い。
『出かけてるのかなぁ』
何というか人が居るとか以前にここの空間だけ異質に思えてしまう。
気のせいなんだろうが、家自体が不気味に見えて莉杞の不安が余計に膨れ上がってくる。

カチャ

『ん？』
鍵が開く様な音がしたけど、ドアが開く気配は無い。
莉杞は恐る恐るドアをゆっくりと開ける事にした。
『こんにちは、開けますよ』
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。
ドアは静に開き始め、重い空気を吐き出す様に生暖かい空気が流れてきた。
玄関に人は居ない、居た気配すら無いのだ。
いつもと変わらないはずの玄関が今は何故か重く感じる。
いつも遊びにくる何気ないいつもの玄関のはずなのに全く違うものに思えたのだ。
『沙織、居るんでしょう？』
莉杞は玄関に首を突っ込んで声をかけた、何故か今は入りたくない、直感的にやばいと思ったからだった。
『沙織』
もう一度名前を呼ぶ。
まるで家の中に誰も居ない雰囲気なのである。
不安と少しの恐怖を感じながらそっとドアを閉めて帰ろうとした時。
『部屋にいるよ』
沙織の声が2階から聞こえてきた。
『沙織・・・だよね？』
何故そう思ったのか分からない、沙織の声に間違いは無い、だけど何かが違う気がする。
『何してるの？早くおいでよ』
沙織のはずのその声に少し不気味さを感じながら莉杞は。
『よし！』
気合いを入れて、沙織の部屋に向かう事にした。
『きっと私の気のせいだよ』
独り言で自分を奮い立たせる、合せ鏡なんて変に意識するからいつも通りのはずが違う気にさせてるのだろうと。