光の中に見つけた場所へ私は走り出した。
この一瞬を逃したら私は壊れてしまいそうだったから。
『辿り着いたんだやっと私の場所に』
鏡に映る自分を確認する。
『本当だったんだ、世界は一方向に進んでる訳じゃなかったんだ』
辿り着いた場所は、私の部屋だった。
正確には別の世界の私の部屋。
時計は夜中の2時を過ぎている、部屋には合せ鏡の儀式をおこなった後があった。
『そうか、この世界でも合せ鏡をしていたから私はこちらに来れたんだ』
周りを見回す、注意深く見回しても見つからない。
『この世界の私が居ない』
別の世界から来た私が居るという事は、こちらの世界の私が居てもおかしくはない。
だけどここには私しか居ない。
『この世界の私と入れ替わったのか?』
もしかすると他の部屋に居るのかもしれない、そう思った私は部屋をあとにした。

部屋を出ると一階に明かりがついている部屋がある事に気づいた。
『あそこは台所のはず、こんな時間に何で?』
ゆっくりと音をたてない様に降りて行く、ゆっくりゆっくりと歩を進め台所を覗き込む。
台所には母親らしき人物が夜食を作っているみたいだった。
『どうする・・・この世界でも変わらなかったら・・・』
ここから先の事は覚えていない、正確には思い出したくない。
この世界では家族関係は円満にいってたんだろう、だけど私にはどう向き合えば良いのか分からなかったんだ。
その結果私はこの世界でも過ちを繰り返してしまった。
血で染まった両手を見つめながらその場に座り込む。
『こんなはずじゃ・・・私は・・・こんなはずじゃなかったんだ・・・』
平凡でも良い、ただ家族が欲しかっただけなのに。
心の奥底で悲鳴の様な声が聞こえた気がした、私はそのとき分かったんだ、今私が何処に居るのかを。

私はこの世界の私の中に辿り着いたのだということを・・・

このとき覚悟を決めた。
私は何があってもこの世界で生まれ変わるんだ。
きっと神様が私にくれたチャンスなんだと信じた。

幸せになるんだ、この世界で・・・