私は街を彷徨っていた。
何処に行くわけでもない、ただふらふらと彷徨うだけ。
擦れ違う人は家路を急ぐ人、友達と買い物をしてる人、恋人同士で楽しげな人、皆が幸せそうに見えた、私とは違う、この中に私と同じ人はいるんだろうか?
『よう沙織じゃん、何やってんだ?』
声のする方へ顔を向ける、そこに居たのはクラスの男だった。
嫌がらせをしてくる一人だった。
『なぁ、俺ん家に来ないか?楽しい事しようぜ』
ニヤニヤと顔を近づけてくる、気分が悪い。
私は目を閉じた。
『おいおい、こんな所でかよ。お前って結構好きだったりするんだ』
そう言って私にさらに近寄ってくるのが分かる、鼻先に男の息がかかる。
全て壊れてしまえ
微かな声で呟く。
『え?』
男は私の唇の間近で動きを止める。
私は思いっきり力を込め、何度も繰り返す。
『マジかよ・・・』
男が私に倒れ掛るが体を振り払う、ゆっくりと目を開け足下に崩れ落ちた男に目をやる。
路面が赤く染まっていく、自然と口元が緩む。
私の手には1本のナイフが握られている、その手に握られたナイフは真っ赤に染まり禍々しく光を放っていた。
『そうか、最初からこうすれば良かったんだ』

私は携帯で次々に呼び出し同じ事を繰り返した。
血腥い、今の私はどんな風に見えるんだろう?
『ふっ、あはははははは!!!
我慢する事なんて無かったんだ、一回きりの人生なのだ我慢するなんて馬鹿じゃないか。
私の中で何かが吹っ切れた気がした。
『これからどうしよう』
警察に行く気にはなれない、そんな時ふとある事が思い浮かんだ。
それは以前街の図書館にあった本に書かれていた事だった。
作り話でしかないはずなのに、何故か今はそれが本当じゃないかと思えた。
きっと私が本当にいるべき場所はこんな世界じゃない、私が本当にいるべき世界へ行かなくてはいけない、そう信じていた。

私は廃墟になった工場を拠点に選んだ。
数人の命を奪った為逃亡者として生活をする事になっていたからだ。
あれから図書館から本を盗み出し、書かれている必要なモノを揃えていく、今の私は狂っているのだろうか?今となっては一人殺すも二人殺すも大差がなくなっていた。
全ての必要なモノを集めたとき、そこにあるのは希望か、それとも絶望か、そんな事はどうでも良かった。
何が正しいかの判断すらこの時の私には無かっただろう。
必要なモノを本に書かれている様に並べていく。
『私の場所へ・・・私は、私の場所へ行くんだ・・・』
呪文の様に繰り返し呟く、そしてその時が来るのを待つ。

『ふふっ、そろそろ時間だ。』
私はふらふらと準備した場所へと移動して行く、地面には魔法陣が書かれ、その中心に鏡を向かい合わせで設置していた。
『私は私が本当にいるべき場所に行くんだ』
この時他に人が居たならまるで何かに取憑かれ狂ってるように見えたかもしれない。
『さぁ、私を導いて。私の本当の居場所へ』
一瞬眩しい光が辺りを包む、そして私はついに見つけたのだ本当の場所を。