第二章 対価
莉杞は眠りについたはずだった、だけど何故か今自分が見慣れない景色の中に一人ぽつんといる事に気づく。
周りを見回すと、森の様なだけど見た事もない木の様なものや草の様なもの、地面に立っている様で浮いている感じにも似てる。
『なんだろう、ここ?家に居たはずなのにどうしてこんな所にいるんだろう?』
見慣れない景色、自分が何処にいるのか分からない不安、そう言った沢山のものが莉杞を包み込む。
周りをキョロキョロと見回すと遠くに建物の様なものがある事に気づく、ここにじっと居てもどうする事もできず、とりあえず建物らしき所へ向かう事にした。
『変な所なんだけど何も出ないよね?』
心細さもあるが何故か物凄く怖いという気持ちは出てこない。
どれだけ歩いただろう、かなりの距離を歩いてきたはずなのに疲れが出てこない不思議な感覚の中森を抜け建物らしき場所まで辿り着いた、そこは中世のお城の様に煌びやかでもあり、ホラー映画に出てきそうな悪魔の居城の様に毒々しくもあった。
高くそびえた壁に囲まれて建物全体は見えない、入り口の門の左右の柱には、ガーゴイルの様な悪魔を連想させる石像が鎮座している、今にも両目を見開き莉杞に襲いかかってくるんじゃないかと思えるくらいにとてもリアルに造られていた。
『ホラー映画だとこのあと目を開けて襲ってくるんだけど、まさかね?』
少しの間莉子は2体のガーゴイルに似た石像をキョロキョロ交互に見て警戒していたが、どうやら襲ってこないと結論づけ門に近づく。
『でっかい門だなぁ、簡単には開きそうにないしどうしよう』
莉杞の身長の2倍以上の高さがあり、莉杞が10人並ぶくらいの横幅がある。
よくよく見ると壁にはツタが張り巡らされて誰か住んでいる事の方が不思議に思えてくる。
『どうしよう、ここが何処なのかも分からないし、ここには人は居そうにないし、はぁ・・・私ってば何でこんな所に居るんだろう』
どうしていいかも分からず途方に暮れていたそのとき。
ギィィィィと、扉の片方が開き始めた。
『え!なに!?』
莉杞は扉の向こうから何か襲ってこないか目を凝らす、襲ってきたら一気に走り出せる様に体は逃げる体勢をとっていた。
片方の扉が開ききった先には、初老の男性らしき人物が立っている、身なりからすると執事を思わせるような服装で、背筋はピンと伸ばしこちらを見ている。
襲われそうにない事が判り莉杞は声をかけてみる事にした。
『あの』
莉杞が声をかけると同時に執事らしき初老の男性は。
『莉杞様ですね、旦那様がお待ちしております。ご案内いたします故こちらへどうぞお越し下さい』
『え?』
突然見ず知らずの執事らしき初老の男性に名前を呼ばれ、旦那様がお待ちしておりますと言われて何が何やら?少し混乱していると、執事らしき初老の男性は建物の入り口に歩き出していた。
『あっ!ちょっと待って』
莉杞は慌てて後を追って走り出すと、後ろでギィィィィィと門の閉まる音がした。
振り返ると先ほど開いていた片方の門はしっかりと閉まっていて、もうここから外に出る事ができなくなってしまっていた。
『後戻りできないか・・・まぁどのみち進むしか無いし、なるようになれ!』
自分を奮い立たせる、両頬をパチン!と叩き気合いを入れて執事らしき初老の男性を追う、男性は建物の入り口のドアを開けて莉杞が来るのを待っていた。