(11)2013年11月23日

『はい、よろしくお願いします』
僕は今家に荷物を取りにきた運送会社の人にあのカメラを渡した。
前日オークションの最終日、落札者とメールで連絡をした後にカメラを磨き上げ最後の手入れをしてから元箱に入れ、さらに厳重に梱包して今に至る。
本当に良かったのか、ずっと今でも悩んでいた。
落札者は女性だった、隣の県の人でカメラは初めてだとメールに書かれていた。
このカメラを一目見て気に入って入札していたらしい、何故か意地でもこのカメラを落札したかったとも書かれていた。
同じカメラは他にも出ていたのに、僕のカメラを選んで。
『この人なんだろうか?』
取引のメールをやり取りしながら何度も迷っていた。
この落札者の女性に未来から届いた初めての写真をメールに添付するか、だけどそんな事できるはずも無かった。
荷物を発送した後メールで落札者に連絡をする。

発送しました。
このカメラを末永く大事に使っていただけると嬉しいです。
この度は落札していただきありがとうございました。
また機会がありましたらよろしくお願い致します。

追伸
カメラが初めてとの事ですので、何かお困りの事がありましたら気軽にご連絡下さい。
カメラの操作での疑問、故障などできる限り対応させていただきます。

今できる限りの事をやってみたんだ、あとは・・・
『どうしよう』
落札者に接触する訳にもいかず、手放したもののどうする事もできない事に気づいたのだった。