第四章 図書館
朝起きて身支度を済ませるとマウンテンバイクにまたがる、向かう先はK市の図書館。
昨日の電話が気になりあまり寝付けなかった為眠い目をこすりながら図書館で地図を探す。
『やばいなこの静けさ、眠くなりそうだ』
なんて事を呟きながら探し当てた地図を開く。
『なんて言ってたっけな?』
昨日の電話を思い出してみる。
確か出てきたキーワードは『
丘』『
廃工場』『
教会』だったかな。
何かを忘れている様な?
とりあえずこの条件で取ってきた地図を見る。
『まずはK市の名所の教会を探すか』
電話から聞こえてきた男は名所の教会と言っていた。
K市で有名な教会はここしか無い。
その教会が見えるであろう丘は全部で3カ所。
『3カ所か、全部調べるにはきついよな・・・』
地図ではそれほど距離も無いし、丘も大きくないのだけれど、実際は違う。
丘と言っても山に近いものもある。
また距離もあるため、それぞれを調べるには時間がかかりすぎる。
もし本当に丘の上から落とされたのなら許される時間は少ないと思って良いだろう。
『近くに使われてない工場か』
これが重要なんだろうなと思って地図を見てみるがどの丘にも工場のマークは無い。
『使われてないんだから載ってないのかな?
他に何か忘れてるような・・・』
昨日の会話を思い出そうとすればする程焦って思い出せない。
『焦っても仕方ないし、少し休憩するかな』
入り口にある自販機で缶コーヒーを買うと一気に飲み干す。
『あれはやっぱり悪戯なのかな?』
壁にもたれかかり一息つきながら頭を整理していく。
『何で自分に電話してきたんだろう?
それも疑問なんだよなぁ』
そう、何故自分なんだろう?
助けを求めるなら友達や家族に連絡した方が良いのに。
分からない事だらけだ。
それと人が入った状態で落とせるって事はそんなに大きくないモノに閉じ込められてるってことだし、そう言えば狭いって言ってたな。
ブツブツと一人呟きながら整理していく。
『問題はどの丘か、だよなぁ』
どうやって絞り込もうかと悩んでいると学生の話し声が聞こえてきた。
『ねぇ、今度の学級新聞何にする?』
『そうだね、歴史関係ってどうだろう』
『歴史か、例えば?』
『落ち武者伝説あるでしょ、あれを扱ってみるとか』
『逃げてきた道とか?』
『あ!それ良いね
今は使われてない獣道とかありそうだし、ちょっとしたドキドキもありそうだね』
『好きな人と取材と称して、怖がった振りでキャッとか』
『あはは、それ良いねぇ』
なんて平和な・・・
『落ち武者ねぇ』
そう言えばそんな伝説あったなぁ。
『落ち武者が逃げてきた道なんて分かるのかねぇ?
本当使われてないだろうから獣道だろうなぁ』
・・・
・・・・
『何か思い出しそうなんだけど・・・』
ずっと引っかかってたモノが出てきそうなんだけど出てこない。
『う〜ん』
落ち武者、獣道、歴史・・・
しばらく繰り返しながら昨日の会話を思い出す。
・・・
・・・・
・・・・・
『そうか!
今は使われてない旧道にある工場の近く』
旧道の近くにある使われてない工場を探せば、きっと見つかるかも知れない』
慌てて戻り地図を探す。
地図と言っても今の地図ではなく数年前の地図、いや数十年前になるかも知れない。
適当に年代を遡って地図を取ってくると教会の見える丘の周辺を調べてみる。
『これも無いか』
残るはこの図書館にある中で一番古い地図だけに、これに書かれていなければ・・・
思い切って地図を開きそれぞれの丘の周辺を探してみる。
『あった!』
つい大きな声を出してしまい周囲から睨まれてしまった。
『今の地図とこの地図をコピーして、あとはそこに行ってみるしかないか』
図書館にあるコピー機でコピーを取るとバッグに詰め込み急いで図書館を後にする。
時計を確認すると12時を過ぎたところだ。
『今から向かえば14時前後ぐらいか』
駆け足で駐輪場に向かい、マウンテンバイクを目的地へ向けて思いっきり走らせる。
『まさか本当にあったなんて、電話の人無事だと良いんだけど』
街を抜け目的の丘を目指し走る。