第六章 着信

警察で事情聴取を受けて開放されたのは日が暮れて夜になってからだった。
『疲れた・・・』
何度も同じ事を繰り返し聞かれて疲れたのだ。
思いっきり深呼吸をして一息つく。
『今日は長い一日になったなぁ』
今日一日を振り返りながらも一度深呼吸をすると、マウンテンバイクを取りに駐車場へ向かう。
その時黒電話の音が携帯の着信を知らせる。

リリリリリ!リリリリリ!


携帯を手に取り確認すると、”ユーザ非通知”では無く番号が表示されていた。
『もしもし?』
電話に出てみると。
『ありがとう、見つけてくれて』
電話の相手はお礼を言うとすぐに電話を切った。
携帯を見つめながら、今までのモヤモヤとした霧がス〜と晴れた気分だ。
『そういう事だったのか
何で家族や友達じゃなくて、自分に電話をかけてきたのかやっと分かったよ』
月明かりに照らされた街を横目にマウンテンバイクを走らせ心地良い澄んだ空気を全身で感じながら駆け抜けていく。

次の日朝のニュースや新聞はどれも昨日の事件ばかり。
朝食をとりながらテレビを見ていると昨日の刑事さんが尋ねてきて、少し事件の事を話してくれた。

帰り際に刑事さんが。
『君がもしあの電話を信じなければ、彼女は今も人知れずにあの場所に居ただろう
家族の元へ帰りたくて、ずっと気づいてくれる人を待ち続けて、その思いが君に繋がったんだと思う
本当に不思議な事もあるものだね』
犯人は捕まっているが事件の全容はまだ分かっていないという、まだまだ被害者は増えるかもしれない。
もしかするとあなたの携帯電話にも・・・

リリリリリ!リリリリリ!


終わり