(4)2013年11月28日
いつもの様に私の小さな世界を撮っていた。
本当は外に出ていろいろな物を撮ってみたいのだけれど、今はまだ・・・
ある程度撮ったら部屋に戻りRAW現像をする。
最初は何が何だか分からなかったけど、今はかなり手際よくやれるようになってきていた。
それも当然か?ほとんど家で過ごしてる訳だから時間はたっぷりとある訳だし。
パソコンに取り込んだ写真を確認していく、確認作業が少し楽しみになってきていた。
それは2010年の写真がいつも紛れ込んでいるからだ。
どうしてこうなっているのかは知らないけれど、何故か昔撮られた写真が1枚、多い時には2、3枚紛れ込んでいた。
本当なら気味が悪く思うのだろうけれど、私はその紛れ込んでいる昔の写真がとても楽しみだった、私の知らない世界がそこにある、自分では行けない場所をその写真で知る事ができるから。
街中だったり、駅の構内だったり、海、山、沢山の場所に出かけて行ってる。
実際には行った事が無いのだけれど頭の中でここはこんな所だったんだろうなぁって考えながら、いつの日か自分でも行ってみたいと思っていた。
たとえそれが無理な事であったとしても。
『今日もあるかな?過去の写真は』
いつも確認するときはリスト表示せずに一枚一枚順番に見ていく、そうやって見ていくと2010年の写真が突然現れるから、何というか当たりを引いた様で楽しかった。
リスト表示してしまうと簡単に見つけてしまうからこの方法に変えた。
そうして一枚一枚確認していく、確かに2010年の写真がまた紛れ込んでいた。
だけど今日の写真はいつもと違っている。
2013年のあなたへ
はじめまして、こちらは今2010年です。
あなたの撮った写真がこちらに何故か届いています。
もしかして、あなたの所へもこちらの写真が届いているのでしょうか?
私が初めて撮った写真に書き込まれていた。
不思議だったけど、同時に嬉しかった。
『凄〜い!こんな事ってあるんだ!!』
私は思わず大声を出してしまった。
その声を聞きつけて婆や(お手伝いさん)が。
『お嬢様、何かあったのですか?』
突然の大声で吃驚して駆けつけてきたのだった。
『大丈夫、ただネットを見てて吃驚しただけ。何も無いから』
『もう、吃驚させないで下さい。旦那様からお嬢様の事をくれぐれも頼むと・・・』
『本当大丈夫だから、ごめんなさい吃驚させて』
小言が長くなりそうだったので途中で無理矢理止める。
『ふぅ・・・』
婆やは一つ溜息をした後。
『ネットで吃驚されたと言われてましたが、何か面白いものでも?』
この婆やは年の割に物凄くいろいろな事に興味を持つ、以前台所へ飲み物を取りに行ったときは、蟻の大行列を1時間見ていたほど。
私がきた事に気づいて。
『お嬢様、見て下さい。蟻はこうやって情報を交換しながらどこに餌があるのか教えて巣に持ち帰ってるんですよ』
なんて言いながら虫眼鏡で蟻を拡大していた。
ある意味私の好奇心はこの婆やからきているんだろうと今でも思う。
その婆や直感的に何かを察したようだった。
『ふふん、さすが婆や!だけど今は内緒』
『やっぱり何か面白そうな事があるんですね?お嬢様この棺桶に片足を突っ込んだ婆やにも冥土の土産に教えて下さいよ』
『冥土の土産って大袈裟な』
少し婆やは考えて、 小さくガッツポーズをしながら。
『うん、そうですね。冥土の土産は大袈裟でしたね、まだまだこの婆や知りたい事もありますし死ねません!』
この人は私よりも長生きするだろうといつも思う。
まぁすぐに嗅ぎ付けられると思ったので婆やに話す事にした。
私も試してみたい事があったからそれも手伝って欲しかったし。
『あのね、この間手に入れたこのカメラの事なんだけどね』
この数日の事を婆やに話、パソコンに取り込んだ写真の中から2010年の写真を見せる。
そして先ほど大声を出した原因となる写真を最後に婆やに見せると。
『凄いじゃないですかぁ!!!』
婆やの大声は部屋に響いた。
もしかすると私よりも食い付いたかも・・・。
『お嬢様、これは確かめないといけません!』
『だけどどうやって確かめたら良いんだろう?』
あれから婆やとこの過去からの写真について話していた。
『そりゃお嬢様、簡単ですよ。同じようにすれば良いんです』
『え?』
『もしこの写真が本当に2010年から届いたのであれば、同じくこちらからも2010年に写真が送られていた事になりますよね。実際お嬢様の最初の一枚目にメッセージが書き込まれていた訳ですから。で、あるなら。こちらも同じようにあちらからの写真にメッセージを添えて写真を撮れば良いんですよ』
ごもっともな意見でした。
そう、私も同じ事をすれば良かった。
そこで婆やに頼んでプリンターを買ってきてもらう事に。
と言っても、婆やが買ってくるには大変なので当然婆やから他のお手伝いさんに指示がいく。
そうして待つ事30分。
ドアが壊れるんじゃないかと思うぐらいの勢いで婆やが満面の笑みを浮かべ手にプリンターを持ち。
『お嬢様!来ましたよプリンター!!』
絶対に私よりも楽しんでる。