玄関にまで言い争ってる声が聞こえてくる。
『誰の育て方が原因であんなになってるんだろうな?』
『私のせいだって言うの?』
『他に誰がいるんだ?学校でも問題は起こす、勉強もしない。家にも帰ってきやしない。本当に躾が行き届いた娘に育ったもんだな』
『あなたは何もしないじゃない!いつも何か問題が起これば私に責任を押し付けるだけ。私だってあんな子もうたくさんなんだから!!』
いつからだろう?
家族なんて私には無いと思ったのは・・・
言い争ってる姿しか私には思い出せない、家族で楽しい思い出なんてあるんだろうか?
『もう嫌・・・』
消え入りそうな声が漏れる、両耳を塞ぎその場に踞る。
テストで悪い点を取れば。
『こんな簡単な問題も分からないのか?父さん達に恥をかかせるのか?』
『本当ね、いったい何をやったらこんな点とれるのかしら』
クラスで嫌がらせを受けた事を言った時も。
『嫌がらせ?そんな事自分で何とかしろ。まさか自分の意見もお前は言えないのか?』
『すぐに人のせいにするのは良くないわね、沙織のそう言う所直した方がいいわよ』
私は必要とされていないのだろうか?
これから先もずっとこんな人生なんだろうか?
以前は学校に行けば友達と呼べる人もいた、小さい時からの友達。
だけど嫌がらせが酷くなるにつれ距離を置くようになっていった、直接何かをする事は無い、嫌がらせをする側じゃない、ただ傍観してるだけ。
それが一番辛かった。分かってるんだ、私と仲良くすれば同じ目に遭うから近寄らない。
たぶん逆の立場なら私も同じ傍観者になっていただろう、それが嫌がらせをする者と同じだと分かっていても。