『莉杞、早く起きなさい!学校に遅れるわよ』
思いっきり布団を剥ぎ取られ目が覚めた。
『う〜ん』
莉杞は伸びをするとベッドから体を起こしながらあの出来事を思い出す。
『あれって夢だったのかな?』
だけど夢にしては鮮明に覚えている、いつもなら夢を見たと分かっていても内容まではあまり思い出せない事が多い。
だけどはっきりと覚えている自分に少し吃驚していた。
窓の外は快晴と言わんばかりに雲がほとんど無く、昨日の嫌な出来事など全てを浄化する様に街を太陽が照らしていた。
昨日の事は全部夢なんじゃないかと思えてしまう。
莉杞は制服に着替え食事を済ませると。
『いっていきま〜す』
勢い良くドアを開けて飛び出した。
『気をつけて行ってくるのよ』
背中に母の声を受け止めて、莉杞は大きく手を振りながら走り出した。
昨日の事は夢なんだと思いながら莉杞は沙織の家へと向かう。
本当に夢じゃないかと思えるぐらいに今日の天気は良い、そして昨日の憂鬱を吹き飛ばすかの様に莉杞の心も軽かった。
学生達が行き交う中、莉杞は沙織の家へ到着する。
沙織の家はいつもと変わらず嫌な雰囲気は無かった、いつもの気軽に遊びに来ていた普段通りの沙織の家。
『やっぱり昨日の出来事は夢だったんだ』
莉杞は玄関を開けて。
『沙織、学校に行くよ』
大きな声で沙織を呼ぶ、すると1階の台所から沙織が顔をだして。
『あれ、莉杞じゃない。今日は珍しく早いね。まさか莉杞に迎えに来られるとは私が遅いのか?』
沙織は毎朝図書室でオカルトやサスペンス、ファンタジーなど読み漁っている。
そんな事もありいつも朝は早く学校に行く事が多い、たまに一緒に行く事はあるが基本的に沙織の方が学校へは早く着いている。
少し不思議そうな沙織だったが。
『ちょっと待ってて、今鞄とってくるから』
そう言うと2階へ上がって行った。
『やっぱり昨日の出来事は夢だったんだ』
莉杞はいつもの沙織を見て自分は疲れてあんな夢を見たんだろうと思っていた。