走る
『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・』
僕は今走って逃げてる。
何から逃げてるかと言うと・・・
その日は休みで久しぶりにカメラを持って出かけてたんだ。
気侭に写真を撮りながら街をぶらぶらして、休日を楽しんで家に帰るはずだった。
裏路地に入ると表通りとは違った街の景色がある、僕はそれが好きで裏路地をよく歩く。
怪しい感じの店やガスボンベやメーター、そういったあまり主役にはならない被写体が心をくすぐるからだ。
何気に写真を撮ってると
『ゴト!?』と音がした。
『ん?』
その時僕はあまり気にもしていなかったんだけど、間もなくして気づいたんだ。
(つけられてる?)
何となく背後から視線を感じていたんだけど、だんだん殺気に近いものを感じる。
相手に気づかれない様に後ろを向かずに歩くスピードを速めてみた、もし本当に後を付けられてるなら分かると思ったからだ。
タッタッタッタ!
僕は少しスピードを上げた。
裏路地という事もありほとんど人通りは無い。
タッタッタッタ!
背後から同じくスピードを上げて付いてくるのが分かる。
(やっぱりつけられてる
もしかして撮っちゃいけないものを撮ってしまったんだろうか?)
そんな事を考えながらどうしたものかと歩を進める。
背後からの足音を気にしながらあの建物の事を思い出した。
あの建物とは、数年前から廃ビルになった建物でこの裏路地にある。
以前はアパレル関係や雑貨店が入って結構人気のビルだったんだけど、ここ最近の不況で入ってた店が1店また1店と減っていきついに廃ビルになってしまった。
そのビルは3階建てで、入り口の扉は鍵もされずに開いている。
鍵がされていないのは意外に知られていない為、このビルにこっそりと忍び込み裏路地を高い位置から撮影するポイントにしていた。
(よし、廃ビルで振り切ってしまおう)
そう思うが先か僕は一気に走り出した。
『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・』
あの角を曲がればすぐだ。
後ろを振り返らず全速力で走る。
背後からの足音も同じく全速力で走ってくるのが分かる。
角を曲がって廃ビルまで走って、入り口の扉を開けようとした時だった。
ガタ、ガタ、ガタ
『ん?』
扉を押したり引いたりしても開かない。
ガタ、ガタ、ガタ
『マジかよ』
その時僕は・・・